サッカーとハート :サッカーの要素2010-06-26

サッカーの重要要素とは何か?よく3大要素とか言われ「技術・戦術・体力」が大切だといわれる。ある人は精神力を入れて4つともいう。中には「精神力・技術・戦術・・・」とあえて最初に精神力を持ってくることを強調する人もいる。私は順序はともかくとして必要要素は精神力を少し具体化して『技術・戦術・体力・繰り返し力・大人力』と言いたい。

大人にする

試合が始まれば監督の力など微々たるものだ。試合までのトレーニングや日々の選手とのやり取りの中で試合に向けての準備をしなければならない。試合前のトレーニングで作戦を落とし込み大切なことを感じ取らせるのかが試合を左右する。大事な試合になればなるほどそのウェイトは増す。しかし試合までの時間は限られ、トレーニングを重ねても短時間で激上達する訳でもない。“上達”とは“徐々”に成長する代物だから。

限られた中でいかに効率よく効果を上げるかは何もスポーツに限ったものではない。どんな集団にも共通した課題だ。ではどうやって効果を上げるのかというと日々のトレーニング内容・メニューも大事な要素なのだがどれだけ選手を大人に成長させられるかだ。年齢ではない。いわゆる大人にすることだ。

選手の能力を測る

大人とは何なのかと言われれば簡単にいえば信頼できるものがあるかどうかだ。試合になれば監督は様々なシュミレートをして試合の流れや勝利までの道筋を建てる。そのストーリーによって必要な選手をチョイスする。
サイド突破にウェイトを置くか? 
中央突破にウェイトを置くか? 
守備では相手の選手を抑えるためにどういった質の選手を起用するか? 
監督とは試合前までが勝負だ。要するに試合に対する作戦を選手に託して送り出す訳だ。と言うことは選手が作戦を遂行することや実践することは勝利に必要不可欠な要素となる。言いかえれば選手の実践力が試合を左右することにもなる。

18歳以上の学生を指導して感じることが大人になった選手と大人になりきれない選手の違いである。監督は選手に作戦を託す際、100%とは言わないが高確率で実践してくれるだろうと言う選手への計算のもと試合のストーリーを建てている訳だからその根底には選手がどのくらい作戦を実践できるかという“選手の能力を測る”ことが試合前1週間の監督としての仕事になる。もちろん技術・戦術向上のために手を変え品を変えでトレーニングメニューを施すが一方で選手への評価が多くの仕事になる。

信頼の見積もり

私のチームの選手はボールを止めて蹴ることができる。相手プレッシャーの度合いによりミスが比例はする。これは世のサッカー選手誰しも同じ。余裕が少ないほどミスは多くなり余裕が多いほどミスは少なくなる。そのプレッシャーによるミスの量を計算しつつも本番では如何に守り、如何に攻めに出ていけるかをシュミレートする。結局「あの選手なら○○をやってくれるだろう」、「△▽までならこなせるだろう」と監督は見積もりをする。この見積もりは言い換えれば選手への信頼度だ。見積もりが甘ければ敗戦が濃くなる。それは監督の見積もりの甘さだ。だから確実に見積もれるように確実性を高める指導が必要となる。

確実に仕事をこなしてくれる選手は押し並べて皆、落ち着きがあり思慮深く、周囲に敏感になる。周囲に気を使えるようになり私と会話していても大人同士の会話になる。もうそこには子供の面影はない。そういう変化を大学と言うカテゴリーでは感じ取ることができる。ひょっとしたら高校生年代でも1・2年生と3年生の変化には共通したものがあるかもしれない。もしかしたら中学1・2年と3年生にも大なり小なり“大人”への変化があるだろう。指導をしている人には感じていただけるように思う。

やり通す強さ、継続する強さ、繰り返す強さ

サッカーの指導はサッカーの戦術を基本から学ばせ、その戦術を実践できる技術を身につけさせなければならない。同時に必要になってくるものがサッカーを「好き」にさせることから徐々に「うまくなりたい」と言う思いに変え、引いては「強くなりたい」「勝ちたい」「選ばれたい」「代表になりたい」とグレードを上げさせていくメンタリティ向上が指導の大きなポイントとなっていくはずだ。もっとも年齢に応じて目標設定は変化させることが大切だ。ところが目標とは言うことは簡単だが実践することが難しい。指導者はそこに悩む。

だから私はトレーニング現場の2時間で様々なメニューを施すが、最近はコーチに練習を任せたりする。選手が飽きるからだ。そしてもっと大切にしていることはグラウンド上でのメニューの質より如何に大人に変えていくかの“作業”の方だ。これはグラウンド以外のことやクラブ内のルールやマナー、平たく言えば躾の部分だったりする。そしてもっと大事にしていることがトレーニングの一つ一つのメニューにおいてもクラブのルールについてもやり通す強さ、継続する強さ、繰り返す強さの要求である。1回やって終わらない、何回もやり通す・やり続ける、相手より一瞬早く動き出す・そしてまた繰り返す・・・そういった要求がサッカーの質を上げることであり、結果、質が上がれば試合にも勝てる。

また、やり通す強さ、継続する強さ、繰り返す強さを要求することがなぜサッカーに必要なのかを理解した時に選手は大人になっていくと感じる。大人になっていくと要求をこなせるようになる。要求をこなせるようになると・・・つまり信頼を勝ち取ると・・・つまり見積もりが確定すると・・・選手は上達し大人になる。これは選手上達には切っても切れない重要な要素であり選手測定ポイントでもある。つまり正確な見積もりをするための重要な資料となる。見積もりが上がれば要求できる戦術も比例していく。だから選手の重要要素には入れておく大切なことと私はとらえている。

大卒

もともと質の高い選手を取ってくれば最初から高い見積もりができるというわけだ。しかし指導の面白さは努力をした結果、高度な見積もりができ予想以上の売り上げをしたとき喜びは激増する。これは一般会社も同じか・・・?結局腕が問われるということだ。選手を集めて勝つのも楽しいが選手を育てて勝つのはもっと楽しい。なぜなら指導者だから。

ましてや卒業後に社会に出ていく世代である。繰り返す・継続する・・・から派生する・・・打たれ強い、世間の空気を読める、必要条件を理解する、選手が自分の見積もりをする・・・こういった能力がサッカーにも社会にも必要であるなら養わない手はない。